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Introduction:side Moon
#刀剣乱舞
時の政府の三日月宗近たちの話
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「これまでにない規模の歴史改変が発生しました」

 時の政府、正史観測室。
 巨大なモニターのブルーライトが、二人の刀剣男士を照らす。
 一人は、白く長い髪に芥子色の装束を纏い太刀を佩いている。名を小狐丸。
 もう一人は青い狩衣風の戦装束。そしてその双眸には月が浮かんでいる。名を三日月宗近。
 共に三条小鍛冶宗近の手による刀剣から顕現された刀剣男士である。
 モニターの前には政府所属のクダギツネ、こんのすけがちょこんと座って画面上で忙しなく視線を動かしている。
「時代は文永十一年――西暦1274年、文永の役。場所は太宰府です」
 こんのすけがぽん、と前足でモニターをタップすると、九州の地図が映し出される。その地図上には赤い点――太宰府の場所が示された。
「正史において文永の役の際、太宰府への侵攻は九州の武士たちによって防がれました。しかしこの時間軸では博多湾の防衛ラインが破られ、太宰府へ元軍が侵攻。その勢いのまま元軍は九州全土を侵略し、虐殺を続けています。このままでは西国一帯が元軍に蹂躙され、都、そして鎌倉まで到達するのにそう時間はかからないでしょう」
「ふむ。しかしここまでの侵攻をなぜ許したのだろうな。文永の役では北条得宗家の号令の下、九州の御家人が博多湾に参集していたはずだが」
 はて、と三日月宗近が首を傾げる。
「……この時間軸の鎌倉幕府には、北条時宗、あるいはそれに相応する力を持つ人物が存在しません」
「それはどういうことです?歴史を変えるために、歴史上の人物を殺したとしても、歴史の修正力により本人の代わりにそれに近い力を持つ者が台頭するはず。まして元寇は日本国がこれからも存続できるかどうかの瀬戸際の戦。審神者や歴史家の間で【日本歴史上一の守護者】とされる北条時宗が存在しないなどあり得るのですか」
 小狐丸が疑問を口にする。
 鎌倉幕府八代執権、北条時宗。
 二度の元寇に対し、当時幕府として出来る限りの対策を行い元軍に相対した。
 時宗たち幕府首脳陣の情報収集、作戦立案。そして九州の御家人や在地の武士たちの、まさに気狂いの如き敢闘。この2つが合わさり二度の元寇は退けられた。
 かつて『元寇には神風によって勝利した』と実しやかに言われていた。
 しかし現在では研究が進み、『神風――暴風や台風が直接の勝因ではなく、九州武士たちの抵抗が非常に強かったため元軍は太宰府を落とす事が出来ず撤退。その撤退中、神風に遭った』というのが定説となっている。
「確かに、時宗に代わる執権はいました。しかしこの時間軸を狙った敵は徹底していました。時宗を始めとした幕府首脳陣を少しずつ時間遡行軍と入れ替え、水面化で活動していた。彼らの行動全てが、こちらの観測上『多少の誤差』で収まる程度に……そして、機を見計らい一気に歴史の秤を動かした。二月騒動の長期化による北条得宗家への権力集中の失敗。それによる元寇対策の不備。駄目押しに時間遡行軍を元軍へ大量に紛れ込ませ太宰府を強襲。ただでさえ元寇に対する方針が決まらない体制不備を突かれた九州勢は抵抗するも、時間遡行軍が大量に紛れ込んだ元軍に押されたった一日で博多湾を突破され太宰府は陥落。元軍はそのまま九州全土を蹂躙。西国から一気に鎌倉まで攻め上る勢いです」
「既に正史の範疇からは大きく逸脱している、ということか」
「はい。国はこの時間軸を【国史に非ず】と判じました」
「つまり――」
 この時間軸は、この先どうあっても『日本国の歴史にはならない』ということだ。
 元――前身となったモンゴル帝国は、一度でもモンゴルに歯向かったが最後、徹底的に相手国の国民を殲滅するだけでなく文化、文明を破壊する。
 国の文明、文化とその担い手たる国民の殲滅。
 それは国の記憶(れきし)の消滅である。
 加えて元には時間遡行軍が与している。いくら「戦うために戦っている」などと揶揄された鎌倉時代の武士といえど、人外の時間遡行軍には敵わないだろう。
「これよりこの時間軸――便宜上【文永太宰府】と呼称しましょう。この前後の時間軸を正史から切り離し隔絶、封印処置を行う事を政府は決定しました。三日月宗近、小狐丸。あなた方二振には、現地で封印処置を行う準備及び文永太宰府の調査を命じます」
「まあ確かに、失敗例から学ぶことはあるからな」
「……三日月宗近」
「なに、ちょっとしたジョークというやつだ。許せ、ははは」
 三日月宗近の皮肉とも取れる発言に、こんのすけは片眉を跳ね上げる。そんなこんのすけを気にする風でもなく、三日月宗近いつも通り和やかに笑った後、僅かに表情を引き締めた。
「しかし解せんな。この歴史改変のやり方では、確実に『日本』という国が残らないだろうに。……いや、寧ろ……歴史改変は単なる手段で、目的は他にあるやもしれんな」
「他の目的……ですか」
 小狐丸が思案顔をする。
 三日月宗近の指摘通り、これまでの歴史改変では、改変が行われても日本国自体が消滅することはなかった。歴史修正主義者が改変するのはあくまで『日本国の歴史』であって、日本国そのものが消滅するよう歴史改変をする事はない。
 ならば、この歴史改変の目的とは。
「……文永年間から先、日本という国がなくなれば、我々に続く後の世の刀剣が打たれない。刀剣男士になり得る日本刀が存在しなくなり……この時間軸における我々側の戦力は平安、鎌倉までのごく限られた物になりますね」
「そうなったとしても、こうして他の時間軸を観測する手段がある以上、こちら側から世界を超えて戦力を送る事は可能だからなあ。それに、戦力を削ぎたいのであれば後鳥羽院の時代を狙った方が良い」
「ふむ……そう言われると確かに」
「……どちらにせよ現地に行ってみねば分からぬ、か」
 三日月宗近の言葉に小狐丸は頷いた。現場の外であれこれ憶測を並べても、時間は過ぎて行くばかりである。

「――では、放棄される世界、【文永太宰府】の調査――はじめよう」

二次創作,刀剣乱舞小説

管理人:遊由/遊の字
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◇◆ 作品リンク ◆◇
◎一次創作 シナトの太刀風

◎二次創作 刀剣乱舞
 

◇◆ 更新履歴 ◆◇
2026.3.29 刀剣乱舞小説、刀剣乱舞イラストまとめup
2026.3.14 刀剣乱舞小説up
2026.1.27 刀剣乱舞小説up
2026.1.18 刀剣乱舞小説up
2026.1.1 新年イラストup


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introduction1
#刀剣乱舞
創作審神者の過去編。 
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 ぱあん、ぱあんと弦音がとある屋敷の一角にこだまする。
 屋敷と言っても、九州の田舎武士の屋敷である。都や鎌倉に住む官職を持つような武家とは比べるべくもない、質素で簡素な屋敷だ。
 ある程度の馬場兼庭兼鍛錬場がある、そんな屋敷である。
 その庭に大的が二つ並んでいる。どちらの的にも中心に矢が刺さっており、刺さっている本数は全く同じだ。
 的の前に立つのはもうじき元服を迎えるであろう年頃の少年が二人。
 一人は凛々しく意志の強そうな眼差しの少年。
 もう一人はままるで童女と見紛うほど美しい容貌の少年だった。
「…」
「…」
「おい隈曽丸。お前の矢、真ん中よりずれとるぞ」
 大的に近づきじいーっと矢の見分をしていた凛々しい顔立ちの少年が、美しい少年──隅曽丸を振り返った。どこか挑発を含んだ声音に隈曽丸はぴしゃりと言い返す。
「同じじゃ。お前と変わらん」
「ほう?俺には右にずれてるように見えるがなあ?」
「気のせいじゃ。()だ言いがかりはやめい」
「チッ」
「隼人丸貴様…」
 凛々しい顔立ちの少年──隼人丸が忌々しげに舌打ちするのを、隈曽丸は見逃さなかった。ぎろりと鋭い眼光を隼人丸へ向けるが、隼人丸はベーっと舌を出し更に煽る。しばらく睨み合いが続いたが、どちらとも無くはあぁあ…と大きく肩を落とした。
「…これで馬術も水練も弓もぜーんぶ引き分けじゃ。次は何にする?」
「…そうじゃな...何にするか…」
 隼人丸の問いに隈曽丸は頭を捻る。
 ──日置隼人丸と延時隈曽丸。二人は所領が近い日置家と延時家の嫡子であり、かつ両家は親戚関係にあるため幼い時から二人でよく所領内の子供たちを引き連れてあちらこちらで遊びまわり、時に何かにつけては競い合っていた。所謂幼馴染兼好敵手というやつだ。
 二手に分かれての石合戦、鷹狩り、競い馬、流鏑馬、犬追物、相撲に水練。あらゆる武芸を競い合ってきたが、何をしても引き分けに終わる。まさに実力博実力伯仲の二人だった。もうそろそろどうやって遊ぶ(競う)かのネタが尽きてきている。
「──ああ、そういや延時殿も大宰府に行っのか?」
 思考の海に沈んでいた隈曽丸を、隼人丸の何気ない一言が引き上げた。
 ──太宰府。最近何やら大陸から蒙古なる国が攻め寄せてくると、父や郎党たちが話していたのを隈曽丸は思い出した。
「行っと言ちょったぞ」
 遠い遠い東の果てにある鎌倉から、役人がぞろぞろとやってきて偉そうに指図するのを見た覚えがある。「鎌倉殿のご恩に今こそ報いよ」等と言っていたような。
 ご恩もなにも元からこの土地は我々の土地なのだが。東から来たなよっちい板東者に指図される謂れはない。
 しかし彼の大陸全土を統一した蒙古が日ノ本を九州から蹂躙せんとやってくるのならばそうも言っていられない。
 この土地は我々の土地。板東者にも、ましてや大陸の者になど奪われてなるものか。
「そうか。なら(いっとっ)ばっかい嫡子として互いに忙すなるのう」
「おう」
 当主である父たちは郎党を率いて蒙古を迎え撃つべく太宰府へと出立する。
 当主が留守の間、自分たちは嫡男として母の指導の下、残された者たちの世話をしたり領地経営を任される事になる。
「…蒙古は強えのかな」
 ぽつりと隼人丸が独り言つ。
 ――大陸の王朝は数百年毎に滅び、生まれ変わる。だが何度滅んでも中原に花開く王朝は、常に日ノ本の先を行く技術を有していた。
 此度の王朝は中原より北の、騎馬の扱いに長けた部族が立てた。それが蒙古――【元】だ。
 噂によれば、元は大陸の西の果てをも版図に治めたという。波斯(ペルシャ)印度(インド)よりもさらに西。大陸の西の方の世界など、九州の片田舎の武士の子どもには想像もつかないが、とにかく蒙古は強い。なんと言っても騎馬と弓の扱いに長けている。その力で宋を打倒し中原の華となったのだから。
 そんな敵に日ノ本のもののふは太刀打ち出来るのだろうか。
「分からん。父上は死んだら私に土地を譲っとかいう書状も書ていもしたが…」
「延時殿はぎっちいしょっな…父上は『死んだ後のこちゃ知たん』ってよ」
「お前の好きにせよちゅうことじゃろ」
「まあ好きにさせっもらうつもいだ」
 隼人丸は弓を片付け始める。空を見れば日が傾き、橙色に染まり始めていた。
 ──もうそろそろ、今日の遊びもお開きだ。
 
「じゃあぼっぼっ(もど)っ。次は…そうだな、剣術で勝負しよう」
「…剣術か、そうじゃな。それもいいな」

 ――生きて会えたら。また、遊ぼう。

二次創作,刀剣乱舞小説

碧水の心臓のプロットは大体完成したし童子切と伊織の漫画も写植は終わった。あとそろそろいい加減introductionシリーズ終わらせたい。introductionシリーズも名前変えるかな。

作業進捗