No.150, No.149, No.148, No.147, No.146, No.145, No.144[7件]
シガーキス
#刀剣乱舞
二筋樋貞宗と伊織の話
時の鐘が鳴った。昼休憩の時間だ。
食堂で昼飯を平らげた二筋樋貞宗は、食後の一服がしたくなったので本丸内に設置されている喫煙所へ向かった。
この本丸には喫煙所が複数個所設置されており、時折刀剣男士たちが煙管やタバコを吸っている。
こういった福利厚生設備は本丸の主――審神者の嗜好が反映されている場合が多い。本好きの審神者なら図書室が充実していたり、料理好きの審神者なら台所設備に力を入れていたり、といった具合に。
それを考えればこの本丸の主――東伊織という男は喫煙者なのだろう、という仮説が立つ。
しかし二筋樋貞宗の目には、今の主は喫煙者には見えなかった。喫煙者特有の匂いが全くしない上に、その類の嗜好品を好む人物ではないと刑事のカンが言っていた。
本丸内に喫煙所が設置されたのは、刀剣男士たちの要望があったからだろう。二筋樋貞宗はそう結論付けた。
戦には直接関係ないが、嗜好品は軍の士気を高める重要な要素だ。
この本丸の主は、喫煙所を単なる親切心で設置したのではない。戦を円滑に運ぶための冷徹な判断によるものだ。
空恐ろしさを感じながらも、まあ俺もそのおかげで大手を振って喫煙出来るんだが、と感謝しながら喫煙所を目指す。近づくにつれタバコの匂いが濃くなってきた。先客がいるのだろうか。ここで古参の刀剣男士と交流するのも悪くない、と思って喫煙所を覗く。
「お、」
「……二筋樋か」
思ってもみなかった人物がいた。この本丸の主、伊織だ。
二筋樋貞宗のプロファイリングでは喫煙者じゃないという判断だったのだが、今回はカンが外れたか。
しばらく吸っていたのだろう、喫煙所にはうっすら煙が漂っている。
変わった香りのタバコだな、と二筋樋貞宗は感じた。こう言ってはなんだが、主の趣味ではなさそうな香りの銘柄だ。
――華やかで派手。そんな印象を受ける香りだった。
「意外だ。あんたも吸うんだな、タバコ」
「いや、これは……貰い物だ」
とぼけた顔でカマをかけてみたら、やっぱり主の私物ではないらしい。いつもの彼らしくない、言葉を選んだような口調だった。
――しかし、非喫煙者の主にタバコを贈るとは。
「ほう、タバコを贈られたのか。くくっ、そうかそうか。朴念仁に見えるが、あんたモテるんだな」
「何の話だ」
伊織は怪訝な表情で眉をひそめた。二筋樋貞宗の言っていることに全く心当たりがないようだ。
人間の見た目は刀剣男士の自分が評価出来るものではないとは思うが、落ち着いた言動は頼り甲斐があるし、刀剣男士としての二筋樋貞宗と同じくらいの身長、身体の厚みがあり、人間でいう所謂男前の部類に入るだろう。モテない理由が見当たらない。
「昔、遊郭では遊女が男に吸いかけのタバコを贈って誘いをかけていたそうだぞ?」
「……」
眉間に皴を寄せて主は押し黙ってしまう。
予想していた反応と違って、二筋樋貞宗は違肩透かしを食らった気分になった。
ちょっと揶揄ってやって反応を見たかったのに、そう言った反応がない、という事は。
「……おいおい、まさか押し付けられたのか?」
「……無碍には出来んだろう」
苦虫を嚙み潰したような顔でそう言い、溜息とともに煙が吐き出される。
――付き纏い。ストーカー。相手は誰だ。政府職員か、よその本丸の審神者か。二筋樋貞宗の脳内が刑事モードで高速回転する。
いや、待て。と二筋樋貞宗は己の思考に待ったをかけた。
彼は基本的に政府職員や他の本丸の審神者から贈答品は受け取らない方針である。収賄罪に引っかかる可能性があるからだ。
よって必然的に主が物を受け取る相手は刀剣男士に限られてくる。
加えて独特な――華やかで派手な香りのタバコを贈ってくる刀剣男士など、思い当たるのはごく少数だ。おそらくあの刀派のあの男士か、と二筋樋貞宗はアタリを付けた。
確かにあの辺の男士なら贈るだろう。ある種のマーキングか、と二筋樋貞宗は内心辟易した。
――それにしても。
(あんたなら断りそうな所だがな)
意外だ。冷徹に本丸を運営している男が、刀剣男士からの贈り物を『無碍には出来ん』だなんて。
顕現して初めて主の人間性――ある種の『甘さ』に触れた二筋樋貞宗は、強い親近感を抱いた。
生来の面倒見の良さと、『刀のお巡りさん』としての正義感から自然と言葉が出る。
「あんたの厚意に付け込んでいるのかもしれんぞ?お巡りさんの俺で良ければ話を聞くが」
「今のところ特に困ってはいないが……そうだな、相談に乗ってくれるならその時は頼む」
「勿論」
それからしばらく二筋樋貞宗と伊織は静かに他の話題で話し始めた。顕現してから数日、本丸に慣れたかとか、貞宗派の兄弟についてと言った当たり障りのない話から編成についての意見といった本丸の運営に関する話もした。
主は寡黙なタイプだが、喋りが下手というわけではないらしい。相槌が上手く話しの繋げ方が自然で、二筋樋貞宗は喫煙所に来た目的も忘れて話してしまった。
時報が鳴り休憩終了5分前であることに気づく。
そうだそうだタバコを吸いに来たんだ、と二筋樋貞宗は内番着のポケットを探る。だが目的のものが見つからない。
「ん?しまった、ジッポを忘れたな。悪い、あんた火を貸してくれないか?」
口にタバコを咥えたままで少し行儀が悪いかなと思いつつ、時間が惜しいので二筋樋貞宗はそのまま尋ねた。
伊織は全く気にした様子もなく、「分かった」と承諾した。
「すまん、ありが──ッ!?」
おもむろに主が身を寄せて来たので二筋樋貞宗は一瞬思考が止まった。隣にいたはず伊織の気配が、異常に近い。
視界には、伊織の顔だけが映っていて。
彼の口元に咥えられている吸いかけのタバコの火が、二筋樋貞宗の新しいタバコの先に押し付けられていた。
――ああ、これ、シガーキスか。
他人事のようにそう思った。どうやらかなり動揺しているらしい。動揺し過ぎて目の前の光景に現実感を感じられない。
主の――微かに香る涼やかな匂いと、タバコの匂いが混ざりあって、全くの別人のようだ。
そうなんじゃないかと思うほど、いつもと雰囲気が違う。
前をしっかりと見つめている目が、今は少し伏せられているところとか。
引き結ばれている口元が、今はタバコを咥えて半開きになっているところとか。
普段の実直で、朴訥な姿からは想像もつかないギャップに、脳の理解が追い付かない。
頭がぐらぐらする。呼吸も浅い気がする。
「ッ……!」
視界の暴力じゃないか。なんだこれは。しょっ引くぞ。
……しょっ引くぞ、と内心吠えるがこの状況を終わらせるのは惜しいと二筋樋貞宗は考えた。
この状況、刀剣男士にとってあまりにも『美味しい』からだ。
今や実戦配備された刀剣男士は120を超え、主と個別に会話するのは難しい。
加えて二筋樋貞宗は新参者。教育奉行の刀剣男士が付いているため、主との会話は教育奉行を通して行われる。
それが今は主――伊織と二人きり。そして物理的距離が近い。
みすみすこの状況を手放す理由が見当たらない。
刑事としての理性は、刀剣男士の本能には勝てなかった。
――仕方ないだろう。お巡りさんとはいえ、俺は刀なんだから。
そう言い訳をしていると、唇に感じる圧力で思考を引き戻される。伊織が微かに眉間の皴を寄せて「ん……中々点かんな」とタバコを押し付けたようだ。
体温を感じるくらい近いし吐息もかかって、これはリアルな口付けなんじゃないか、という勘違いを起こしそうなほど。
――なんだこれ。やばいなこれ。いや本当にやばいなこれ!?
頭の中でガンガン警鐘が鳴っている。ここから先はまずいぞ、と。
だが警鐘とは裏腹に、自然と左手が上がってしまう。
皆の主だから、俺は新参物だからと抑えていたモノが溢れ出す。
もっと欲しい。
もっと主を感じたい。
この、肉の身体で、彼と触れ合いたい。
暴力的で甘美な衝動のまま、主の背中に腕を回し、引き寄せようとした――。
「……点いたぞ」
「ぁ、ああ……」
長い長い刻のように思えて、時間にしてみればおよそ数秒。
二筋樋貞宗のタバコに火が点いた事を確認し、伊織はあっさりと体を離した。
空いた隙間がなんとなく寂しいと感じ、いや何考えてんだと二筋樋貞宗は内心で己の横っ面を殴り飛ばした。
妙な位置に浮いてしまった左手は、首を掻くことでごまかすことにする。
動揺を悟られないように努めて平静を装うが、身体が油を差し忘れた機械のように感じる。ちょっと動くだけでぐぎぎぎ、と体中の関節から音が鳴っていような錯覚がした。精神状態がこんなに身体感覚に影響するなんてな、などと冷静ぶって分析してみるが駄目だった。全くタバコの味がしない。というか、俺は今ちゃんと呼吸出来ているのだろうか。隣に感じる主の顔は絶対に見られない。『お巡りさん』として接していたのに、彼でとても破廉恥な妄想をしてしまったように思われて、とても後ろめたい。
……などと悶々考えていると、隣でふ、と息を漏らす音がした。思わず音のする方を見れば、伊織が忍び笑いをして二筋樋貞宗を見ていた。
「……ふ、どうした?焼き入れをした刀身のように真っ赤だが」
「……か――勘弁してくれ……」
全然バレてんじゃねえか!
二筋樋貞宗は顔を手で覆って座り込んだ。気づかないようにしていた顔の火照りを自覚する。おそらく体温は5℃くらい上がったんじゃないだろうか。
「くくく、人を揶揄おうとするからだ」
「ぐ……バレてたのか……」
好奇心は猫をも殺すとはこの事か。
しかしちょっとした揶揄いに対して、ここまでけちょんけちょんにしなくても良くないか。
恨みがましい視線を伊織に向けるが、彼は変わらず喉を鳴らして笑っている。
――これは……タチの悪い男の笑い方だな。
「……だが煙草の件はあんたの自業自得な気がするぞ」
手慣れている様子から、あっちこっちで刀剣男士相手にこんなことをしているのだろう。そりゃマーキングの一つもしたくなる。
苦し紛れにそう言ってやるが、主は全く意に介していない。
「お前たちは素直で揶揄い甲斐があってな。だが、今後は控えよう。とくに、『お巡りさん』を揶揄うのは良くないものな?」
「……くっそ……あんた、意外とイイ性格してるじゃないか」
痴情のもつれなど対応できんぞ、と捨て台詞を吐くが伊織はふっと笑う。
「何を言っている。相談に乗ってくれるんだろう?お前が言い出したことだぞ」
「あ、あんたな……」
伊織の言い分に二筋樋貞宗は思わず閉口した。
そう言ったのは確かだがあれはあんたが困っていると思ったからであってそれとこれとは話が別だろうが……!
二筋樋貞宗がそう言い返してやろうと口を開く。
――かぁん。かぁん。昼休憩の終わりを告げる時報だ。出鼻を挫かれた二筋樋貞宗を後目に、伊織は吸い殻を灰皿に置いて喫煙所を出る。
「ではな。また話そう」
ひらりと手を振り立ち去っていく伊織の背中を見送り、くそ、と悪態をついて二筋樋貞宗もタバコを灰皿に置いて内番へ戻った。
――また話そう。
気を付けなければ口角が上がってしまう、その言葉を嚙み締めながら。
#刀剣乱舞
二筋樋貞宗と伊織の話
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時の鐘が鳴った。昼休憩の時間だ。
食堂で昼飯を平らげた二筋樋貞宗は、食後の一服がしたくなったので本丸内に設置されている喫煙所へ向かった。
この本丸には喫煙所が複数個所設置されており、時折刀剣男士たちが煙管やタバコを吸っている。
こういった福利厚生設備は本丸の主――審神者の嗜好が反映されている場合が多い。本好きの審神者なら図書室が充実していたり、料理好きの審神者なら台所設備に力を入れていたり、といった具合に。
それを考えればこの本丸の主――東伊織という男は喫煙者なのだろう、という仮説が立つ。
しかし二筋樋貞宗の目には、今の主は喫煙者には見えなかった。喫煙者特有の匂いが全くしない上に、その類の嗜好品を好む人物ではないと刑事のカンが言っていた。
本丸内に喫煙所が設置されたのは、刀剣男士たちの要望があったからだろう。二筋樋貞宗はそう結論付けた。
戦には直接関係ないが、嗜好品は軍の士気を高める重要な要素だ。
この本丸の主は、喫煙所を単なる親切心で設置したのではない。戦を円滑に運ぶための冷徹な判断によるものだ。
空恐ろしさを感じながらも、まあ俺もそのおかげで大手を振って喫煙出来るんだが、と感謝しながら喫煙所を目指す。近づくにつれタバコの匂いが濃くなってきた。先客がいるのだろうか。ここで古参の刀剣男士と交流するのも悪くない、と思って喫煙所を覗く。
「お、」
「……二筋樋か」
思ってもみなかった人物がいた。この本丸の主、伊織だ。
二筋樋貞宗のプロファイリングでは喫煙者じゃないという判断だったのだが、今回はカンが外れたか。
しばらく吸っていたのだろう、喫煙所にはうっすら煙が漂っている。
変わった香りのタバコだな、と二筋樋貞宗は感じた。こう言ってはなんだが、主の趣味ではなさそうな香りの銘柄だ。
――華やかで派手。そんな印象を受ける香りだった。
「意外だ。あんたも吸うんだな、タバコ」
「いや、これは……貰い物だ」
とぼけた顔でカマをかけてみたら、やっぱり主の私物ではないらしい。いつもの彼らしくない、言葉を選んだような口調だった。
――しかし、非喫煙者の主にタバコを贈るとは。
「ほう、タバコを贈られたのか。くくっ、そうかそうか。朴念仁に見えるが、あんたモテるんだな」
「何の話だ」
伊織は怪訝な表情で眉をひそめた。二筋樋貞宗の言っていることに全く心当たりがないようだ。
人間の見た目は刀剣男士の自分が評価出来るものではないとは思うが、落ち着いた言動は頼り甲斐があるし、刀剣男士としての二筋樋貞宗と同じくらいの身長、身体の厚みがあり、人間でいう所謂男前の部類に入るだろう。モテない理由が見当たらない。
「昔、遊郭では遊女が男に吸いかけのタバコを贈って誘いをかけていたそうだぞ?」
「……」
眉間に皴を寄せて主は押し黙ってしまう。
予想していた反応と違って、二筋樋貞宗は違肩透かしを食らった気分になった。
ちょっと揶揄ってやって反応を見たかったのに、そう言った反応がない、という事は。
「……おいおい、まさか押し付けられたのか?」
「……無碍には出来んだろう」
苦虫を嚙み潰したような顔でそう言い、溜息とともに煙が吐き出される。
――付き纏い。ストーカー。相手は誰だ。政府職員か、よその本丸の審神者か。二筋樋貞宗の脳内が刑事モードで高速回転する。
いや、待て。と二筋樋貞宗は己の思考に待ったをかけた。
彼は基本的に政府職員や他の本丸の審神者から贈答品は受け取らない方針である。収賄罪に引っかかる可能性があるからだ。
よって必然的に主が物を受け取る相手は刀剣男士に限られてくる。
加えて独特な――華やかで派手な香りのタバコを贈ってくる刀剣男士など、思い当たるのはごく少数だ。おそらくあの刀派のあの男士か、と二筋樋貞宗はアタリを付けた。
確かにあの辺の男士なら贈るだろう。ある種のマーキングか、と二筋樋貞宗は内心辟易した。
――それにしても。
(あんたなら断りそうな所だがな)
意外だ。冷徹に本丸を運営している男が、刀剣男士からの贈り物を『無碍には出来ん』だなんて。
顕現して初めて主の人間性――ある種の『甘さ』に触れた二筋樋貞宗は、強い親近感を抱いた。
生来の面倒見の良さと、『刀のお巡りさん』としての正義感から自然と言葉が出る。
「あんたの厚意に付け込んでいるのかもしれんぞ?お巡りさんの俺で良ければ話を聞くが」
「今のところ特に困ってはいないが……そうだな、相談に乗ってくれるならその時は頼む」
「勿論」
それからしばらく二筋樋貞宗と伊織は静かに他の話題で話し始めた。顕現してから数日、本丸に慣れたかとか、貞宗派の兄弟についてと言った当たり障りのない話から編成についての意見といった本丸の運営に関する話もした。
主は寡黙なタイプだが、喋りが下手というわけではないらしい。相槌が上手く話しの繋げ方が自然で、二筋樋貞宗は喫煙所に来た目的も忘れて話してしまった。
時報が鳴り休憩終了5分前であることに気づく。
そうだそうだタバコを吸いに来たんだ、と二筋樋貞宗は内番着のポケットを探る。だが目的のものが見つからない。
「ん?しまった、ジッポを忘れたな。悪い、あんた火を貸してくれないか?」
口にタバコを咥えたままで少し行儀が悪いかなと思いつつ、時間が惜しいので二筋樋貞宗はそのまま尋ねた。
伊織は全く気にした様子もなく、「分かった」と承諾した。
「すまん、ありが──ッ!?」
おもむろに主が身を寄せて来たので二筋樋貞宗は一瞬思考が止まった。隣にいたはず伊織の気配が、異常に近い。
視界には、伊織の顔だけが映っていて。
彼の口元に咥えられている吸いかけのタバコの火が、二筋樋貞宗の新しいタバコの先に押し付けられていた。
――ああ、これ、シガーキスか。
他人事のようにそう思った。どうやらかなり動揺しているらしい。動揺し過ぎて目の前の光景に現実感を感じられない。
主の――微かに香る涼やかな匂いと、タバコの匂いが混ざりあって、全くの別人のようだ。
そうなんじゃないかと思うほど、いつもと雰囲気が違う。
前をしっかりと見つめている目が、今は少し伏せられているところとか。
引き結ばれている口元が、今はタバコを咥えて半開きになっているところとか。
普段の実直で、朴訥な姿からは想像もつかないギャップに、脳の理解が追い付かない。
頭がぐらぐらする。呼吸も浅い気がする。
「ッ……!」
視界の暴力じゃないか。なんだこれは。しょっ引くぞ。
……しょっ引くぞ、と内心吠えるがこの状況を終わらせるのは惜しいと二筋樋貞宗は考えた。
この状況、刀剣男士にとってあまりにも『美味しい』からだ。
今や実戦配備された刀剣男士は120を超え、主と個別に会話するのは難しい。
加えて二筋樋貞宗は新参者。教育奉行の刀剣男士が付いているため、主との会話は教育奉行を通して行われる。
それが今は主――伊織と二人きり。そして物理的距離が近い。
みすみすこの状況を手放す理由が見当たらない。
刑事としての理性は、刀剣男士の本能には勝てなかった。
――仕方ないだろう。お巡りさんとはいえ、俺は刀なんだから。
そう言い訳をしていると、唇に感じる圧力で思考を引き戻される。伊織が微かに眉間の皴を寄せて「ん……中々点かんな」とタバコを押し付けたようだ。
体温を感じるくらい近いし吐息もかかって、これはリアルな口付けなんじゃないか、という勘違いを起こしそうなほど。
――なんだこれ。やばいなこれ。いや本当にやばいなこれ!?
頭の中でガンガン警鐘が鳴っている。ここから先はまずいぞ、と。
だが警鐘とは裏腹に、自然と左手が上がってしまう。
皆の主だから、俺は新参物だからと抑えていたモノが溢れ出す。
もっと欲しい。
もっと主を感じたい。
この、肉の身体で、彼と触れ合いたい。
暴力的で甘美な衝動のまま、主の背中に腕を回し、引き寄せようとした――。
「……点いたぞ」
「ぁ、ああ……」
長い長い刻のように思えて、時間にしてみればおよそ数秒。
二筋樋貞宗のタバコに火が点いた事を確認し、伊織はあっさりと体を離した。
空いた隙間がなんとなく寂しいと感じ、いや何考えてんだと二筋樋貞宗は内心で己の横っ面を殴り飛ばした。
妙な位置に浮いてしまった左手は、首を掻くことでごまかすことにする。
動揺を悟られないように努めて平静を装うが、身体が油を差し忘れた機械のように感じる。ちょっと動くだけでぐぎぎぎ、と体中の関節から音が鳴っていような錯覚がした。精神状態がこんなに身体感覚に影響するなんてな、などと冷静ぶって分析してみるが駄目だった。全くタバコの味がしない。というか、俺は今ちゃんと呼吸出来ているのだろうか。隣に感じる主の顔は絶対に見られない。『お巡りさん』として接していたのに、彼でとても破廉恥な妄想をしてしまったように思われて、とても後ろめたい。
……などと悶々考えていると、隣でふ、と息を漏らす音がした。思わず音のする方を見れば、伊織が忍び笑いをして二筋樋貞宗を見ていた。
「……ふ、どうした?焼き入れをした刀身のように真っ赤だが」
「……か――勘弁してくれ……」
全然バレてんじゃねえか!
二筋樋貞宗は顔を手で覆って座り込んだ。気づかないようにしていた顔の火照りを自覚する。おそらく体温は5℃くらい上がったんじゃないだろうか。
「くくく、人を揶揄おうとするからだ」
「ぐ……バレてたのか……」
好奇心は猫をも殺すとはこの事か。
しかしちょっとした揶揄いに対して、ここまでけちょんけちょんにしなくても良くないか。
恨みがましい視線を伊織に向けるが、彼は変わらず喉を鳴らして笑っている。
――これは……タチの悪い男の笑い方だな。
「……だが煙草の件はあんたの自業自得な気がするぞ」
手慣れている様子から、あっちこっちで刀剣男士相手にこんなことをしているのだろう。そりゃマーキングの一つもしたくなる。
苦し紛れにそう言ってやるが、主は全く意に介していない。
「お前たちは素直で揶揄い甲斐があってな。だが、今後は控えよう。とくに、『お巡りさん』を揶揄うのは良くないものな?」
「……くっそ……あんた、意外とイイ性格してるじゃないか」
痴情のもつれなど対応できんぞ、と捨て台詞を吐くが伊織はふっと笑う。
「何を言っている。相談に乗ってくれるんだろう?お前が言い出したことだぞ」
「あ、あんたな……」
伊織の言い分に二筋樋貞宗は思わず閉口した。
そう言ったのは確かだがあれはあんたが困っていると思ったからであってそれとこれとは話が別だろうが……!
二筋樋貞宗がそう言い返してやろうと口を開く。
――かぁん。かぁん。昼休憩の終わりを告げる時報だ。出鼻を挫かれた二筋樋貞宗を後目に、伊織は吸い殻を灰皿に置いて喫煙所を出る。
「ではな。また話そう」
ひらりと手を振り立ち去っていく伊織の背中を見送り、くそ、と悪態をついて二筋樋貞宗もタバコを灰皿に置いて内番へ戻った。
――また話そう。
気を付けなければ口角が上がってしまう、その言葉を嚙み締めながら。
昇降デスクめっちゃ欲しい~~~~ってなってる
昇降デスク自体が割と高めなのもあるけど大体4万くらいからか~~~まあなんとか買えるかも…ずっと座ってるの辛くてェ…
座りっぱなしはやっぱり足がむくんでやべ~~~のでェ…
昇降デスク自体が割と高めなのもあるけど大体4万くらいからか~~~まあなんとか買えるかも…ずっと座ってるの辛くてェ…
座りっぱなしはやっぱり足がむくんでやべ~~~のでェ…
朝活でblenderのチュートリアルをやったけど動画のバージョンが古くて同じ操作がblender5.0で再現できなかったので今日の成果物はなしよ~~~~~~~~ん なるべく新しいバージョンのチュートリアル使お…
blenderのチュートリアル講座並走しながら出来るようになってきたしモデリングのスピードは上がってきた気がする。これ昨日覚えたやつだ!みたいな感じで先回りモデリングがチョットダケデキルヨウニナッタヨ。ある程度小物や建物自然物の作り方のチュートリアル終わらせたら自分の描きたいイラストに合った資料集めてモデリングをしてみようかな~~~~


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